「北海道フリーパス」で巡る北海道B寝台旅行記2008

毎年恒例となった北海道旅行記。今年も「北海道フリーパス(グリーン車用)」を片手に、夫婦で旅に出た。今年の目玉は、今夏最後の運転となる「寝台特急 まりも」のB寝台に連泊、線路を走るバス「DMV」、サロマ湖、地球岬、朱鞠内湖などなど、ディープなスポットも訪れた7泊8日の旅行記。

  
3日目 (2008年07月28日)
「天気に左右されない旅」

前夜、釧路を出発した「まりも」は、定刻6:20に札幌へ到着。

今回の旅のテーマの一つ「天気に左右されない旅」。

夜行列車に頼る旅は体力が必要だが、宿を決めない日は、行程に柔軟性を持たせることができる。宿を決めてしまうと、大雨だと分かっている場所へわざわざ足を運ばざるを得ないことも少なくない。そして、何よりもお金を気にしなくていい「北海道フリーパス」は大いなる味方だ。

今日はそんな柔軟性のある行程を組める日。携帯のWebサイトで天気予報を調べてみると、どうやら道北地方の天気がよさそうだ。反対に道南地方はいまいちの様子。

そこで決定した行き先は「朱鞠内湖」。朱鞠内湖を行き先にしたのには、2つの理由がある。

1つ目の理由は、「北海道フリーパス」で乗車できる数少ないバス路線で利用できることだ。「北海道フリーパス」は基本的には鉄道線だが、JR北海道バスが運行するバス路線もフリーなのだ。しかし、札幌や小樽といった都心部を除いては、ほとんど路線がないのが現状。その数少ない路線の一つが深川〜幌加内〜朱鞠内〜名寄を結ぶ深名線だ。この深名線はかつて国鉄時代には鉄道が走っていたが、今はバスによる代替路線となっている。何かとかさむバス代を浮かせるのにも、この朱鞠内を選んだ。

2つ目の理由は、学生時代に出会った見知らぬ旅人の一言だ。大学時代に友人とサロベツ原生花園を訪れた際に、同じ年ぐらいの旅人に出会い、バスの待ち時間に少し話をした。ちょっとさびしげな一人旅の彼の行程を聞いていると、あまり聞いたことのないマニアックな観光地ばかり。そして、「次はどこにいくのか?」と聞いたところ、返ってきた答えが「朱鞠内湖」だった。それからというものの、ずっと一度訪れてみたいと思い続けていたのだ。

旧深名線バスで朱鞠内を目指す

札幌(6:53)→深川(7:55) 【特急】スーパーカムイ1号
深川(8:10)→幌加内(9:20) 【バス】JR北海道バス 深名線
幌加内(9:30)→朱鞠内湖畔(10:23) 【バス】JR北海道バス 深名線

札幌6:53発の特急「スーパーカムイ1号」で深名線の起点となる深川を目指す。「まりも」の札幌到着時刻が昨年よりも30分遅くなったせいで、札幌駅でのゆとりがなく、身支度は「まりも」で済ませていた。朝食は、前日に厚岸のコンビニで買っておいたセイコーマートのパンを車内で食べた。

ちなみに、昨年まで札幌〜旭川の特急名称は「スーパーホワイトアロー」だったが、今年からは「スーパーカムイ」に名称変更。一部には新しい車両も導入されたようだが、今回は残念ながら、以前の「スーパーホワイトアロー」の車両。しかし、自由席にもかかわらず、シートがリニューアルされているようで、座り心地がよかった。

深川に停車する「スーパーカムイ1号」

深川に停車する「スーパーカムイ1号」

深川駅

深川駅

深川で下車し、深川8:10発のJR北海道バス(深名線) 幌加内行に乗り換える。バスはちょっと小型のマイクロバスタイプ。座席のピッチもちょっと狭い。

乗客は僕たち以外におじいさんが一人だけ…。天気良好、のどかな風景の中をのんびりとバスは進んでいく。旅も3日目に差し掛かると、もう大阪の喧騒なんてよその国の話。こんなのんびりとした時間が永遠に続いていくような錯覚さえ覚える。

1時間ちょっとで幌加内バスターミナルに到着(9:20着)。

途中にはこんなカワイイ停留所も…

途中にはこんなカワイイ停留所も…

幌加内といえば、そば。一面にそば畑が広がる。

幌加内といえば、そば。一面にそば畑が広がる。

幌加内でバスの乗り換えと思いきや、深川から乗車してきたバスが引き続き、名寄行になるようだ。車両も運転手さんもまったく同じ。ほとんど休憩タイムに近い。幌加内バスターミナルには、旧深名線の資料室もあったが、10分では何も見ることができず、断念…。そして、幌加内9:20発の名寄行になったバスで再び出発。

結局、深川から名寄まで走りとおす深名線バス

結局、深川から名寄まで走りとおす深名線バス

幌加内バスターミナル

幌加内バスターミナル

こじんまりとした旧深名線資料室

こじんまりとした旧深名線資料室

再び、そば畑とじゃがいも畑に囲まれた道を走り出したバス。心地よい振動に眠くなってくるが、乗り過ごすと大変なので、必死に目を見開いておく。そして、ようやく目的地の朱鞠内湖畔に到着(10:23)。

とっても寂しげな「朱鞠内湖畔」バス停

とっても寂しげな「朱鞠内湖畔」バス停

バス停で下車したのは、僕たち夫婦のみ。大音量で寂しげに鳴り響くバックミュージック。まるで、つぶれかけの遊園地のようだ。辺りを見渡しみるが、人は片手で数えられる程度しかいない。時折、クルマやバイクがやってきても、10分ほど去って行くか、奥にあるキャンプ場のサイトやコテージへ移動していく。

永年の想いが叶ってようやく訪れた朱鞠内湖は、ぶっちゃけ何もない湖だった。こんな湖で次のバスまで3時間40分の長い時間を潰さなければならないのだ…。

バス停から湖を望む

バス停から湖を望む

湖岸には人はちらほら程度

湖岸には人はちらほら程度

周辺地図の看板を眺め、これからの時間潰し作戦会議。湖畔からバスで来た道を少し引き戻ったところに展望台があるらしい。ということで、アスファルト道をテクテク歩いていってみる。北海道というのに、とっても強い日照り。アスファルトに反射する日光とあいまって、かなり焼けそうだ。

5分ほど歩くと、展望台へ続くわき道への看板を発見!

展望台へ目指してウォーキング!

展望台へ目指してウォーキング!

展望台へ続くわき道

展望台へ続くわき道

展望台は小高い丘にある

展望台は小高い丘にある

さらに、5分も歩かないうちに、小高い丘にある展望台に到着。ちょっとした看板と日よけの東屋がある。さきほどバス停で見た朱鞠内湖よりは、こちらの方がちょっと標高があるので、眺めがいい。

ここからの眺めもいい

ここからの眺めもいい

さらに後ろを振り返ると、これぞ本当の展望台を発見。階段をテクテク登ってみるが、かなり老朽化しているのか、床の鉄板がボコボコとへこむ。なんだか底が抜けていきそう。さらに、自然豊かでハチやアブも無数に飛んでおり、かなりこわかったので、早々と退散。

底が抜けていきそうな展望台

底が抜けていきそうな展望台

展望台からの眺め

展望台からの眺め

展望台の横には慰霊碑が立っており、どうやらすぐ横にあるダム建設での殉職者を祭っているようだ。天気もよく、昼間なのに、あまりにも人気がないので、ちょっと不気味な感じがした。日中の心霊スポットか!?

展望台からダムを望む。手前にあるのが慰霊碑。

展望台からダムを望む。手前にあるのが慰霊碑。

朱鞠内湖唯一オープンしていた「レイクハウス しゅまりない」

展望台から再び湖畔のバス停に戻ってくる。ちょうどお昼どきの時間。食事をできそうな食堂を探してみるが、そもそも店がない…。ピンチかとおもいかけたとき、宿泊施設と兼用してそうな、「レイクハウス しゅまりない」を発見。やっているのか怪しげな雰囲気だったが、店の前に行ってみると、「営業中」の看板を発見。おかげで、飢えに苦しむことから回避!

お店は観光地にありがちなベタベタの食堂。他にいる客といえば、工事関係者と地元と思われる人のみ。朱鞠内といえば、幌加内の近く。幌加内といえば、やっぱりそばを食べなければならない。そこで、ちょっと変わった「わかさぎそば」(800円)を注文。

お味の方は、なかなかgood。サクサクの衣に包まれたわかさぎは臭みもなく、とっても美味。おそばは専門店のような絶品とまではいかないが、とっても味の濃いおそばだ。

唯一開いていた「レイクハウス しゅまりない」

唯一開いていた「レイクハウス しゅまりない」

「わかさぎそば」(800円)

「わかさぎそば」(800円)

初めての手漕ボート

お店を出て、湖を眺めていると、朝よりは観光客が増えてきたようだ。といっても、30分に1回、1台のクルマがやってくるかどうかという程度。しかし、貸しボート屋さんでボートを借りる人もおり、湖には3艘のボートが浮かんでいる。

ボートで楽しんでいる姿がとっても楽しそうに見えたので、初の手漕ぎボート体験をしてみることにした。貸しボート代は、30分500円と格安。今までサイクル型アヒルボートは何度も乗ったことがあるが、手漕ぎボートははじめて…。

ドキドキしながら、乗ってみたものの、やっぱりまっすぐ進まない…。最初はかなり不慣れだったものの、少しずつ上達してきて、何とか蛇行運転ながら進むようになった。しかし、がんばりすぎたせいか、ボートを降りた時には、手に豆ができていた。

かなり疲れたけれど、湖上から眺める静かな朱鞠内湖もとてもよかった♪

ボートの上からパシャリ♪

ボートの上からパシャリ♪

日本最寒の地「マイナス41.2度」

ボート遊びを終え、湖畔でバスの時間まで夫婦でおしゃべりタイム。喉が渇いたので、自動販売機へジュースを買いに行くと、見知らぬおにいさんに声を掛けられる。

話を聞いてみると、元々は関西に住んでいたけど、この朱鞠内に移住したそうな。僕たち夫婦の関西弁が懐かしくて声を掛けたのだとか…。どうやら流行の田舎暮らしを夢見てのようだが、朱鞠内の冬はなかなか大変なようで、マイナス20度や30度になる日もあるようだ。その証拠のように、湖畔には日本最寒の地「-41.2度」の碑が建っている。

いつかは夢見る田舎暮らし。なかなか実行に移すことは勇気のいること。そして、実際に暮らしてみると、楽なことばかりではない。しかし、奥さんと子供さんもいらっしゃるようで、仕事中も傍に奥さんと子供がいた。大阪でサラリーマンをやっていては実現できないことだ。何を大切にして、何を犠牲にするか、その選択は勇気さえあれば、ある意味自由なのかもしれないと思った。

日本最寒の地「マイナス41.2度」

日本最寒の地「マイナス41.2度」

まるで大阪のように暑い「名寄」

朱鞠内湖畔(14:03)→名寄(15:04) 【バス】JR北海道バス 深名線
名寄(16:33)→札幌(19:08) 【特急】サロベツ

もうすぐバスの時刻だ。今日最後の名寄行のバス。着いた時は、こんな場所で3時間40分どうしようと思ったが、ウロウロしたり、食事をしたり、おしゃべりをしたり…、そうしているとあっという間だった。この静寂に包まれた湖(というより、空間)から離れることに、ちょっと後ろ髪を引かれるように、朱鞠内湖畔14:03発の名寄行き深名線バスに乗車する。

峠を超え、平野を通り、1時間ちょっとで名寄駅に到着(15:04着)。

峠を越えるバスの車窓はとてもキレイだ…

峠を越えるバスの車窓はとてもキレイだ…

名寄駅前のバスターミナル

名寄駅前のバスターミナル

名寄駅の駅舎

名寄駅の駅舎

バスを降り立った名寄駅は、最寒の地が想像もできないような、最暑の地。まるで大阪にいるような日照りに加えて、ぬるい風。それもそのはず、街中の温度計は32度を指していた。

32度を示す商店街の温度計

32度を示す商店街の温度計

札幌へ向かう特急列車までの待ち時間、冷房のない駅の待合室にいても暑いだけなので、駅の近くにある大型ショッピングセンターのフードコートで、奥さんはジェラート、僕はカキ氷。ちょっと歩いただけで夏バテしてしまったので、冷たいものがとてもおいしい。

名寄16:33発の特急「サロベツ」に乗車。自由席だったが、余裕で席を確保。しかし、途中の旭川からは話題の旭山動物園から帰ってきた行楽客で大賑わい。立客も出る混雑ぶりだった。そして、札幌には、19:08到着。

北海道の回転寿司はやっぱりおいしかった…

コインロッカーに預けていた荷物を取り出した後、隣の桑園へ普通列車で移動。もちろん、今日も夜行列車に乗るため、一昨日も訪れたスーパー銭湯「北のたまゆら」に行くためだ。しかし、あまりにもお腹が減っていたので、まずは腹ごしらえ。ここで選んだのが、桑園駅構内にある、回転寿司「とっぴー」。

以前、「北海道は回転寿司でもおいしい」という話を聞いたことがある。しかしながら、昨年訪れた小樽の「とっぴー」の回転寿司は微妙だった。というよりは、大阪と同じレベルだった。今回は特急車内に置いてあった車内誌の「1グループに付き1皿136円サービス」のクーポンに釣られ、期待せずに店に入ったが、これが大当たり。

ネタは大きいし、なんといってもサーモン系は安い皿でもかなり美味。これは大阪では味わうことのできない品質。小樽はいまいちだったが、桑園ならばもう一度訪れたい。お値段もお安く、夫婦二人で二千円ちょっとだった。

回転寿司「とっぴー」桑園店

回転寿司「とっぴー」桑園店

特急「まりも」で再び道東へ

札幌(23:08)→釧路(翌朝5:50) 【特急】まりも

お腹がいっぱいになったので、すぐ近くにあるスーパー銭湯「北のたまゆら」へ。一昨日も行ったはがり。名寄でたっぷりかいた汗を流し、長風呂の奥さんを待つ間に、またまたレモンチューハイをゴクリ。なんかここのチューハイ、アルコールがあんまり入っていないような気が…。

今宵の宿もやっぱり「まりも」のB寝台。フリーきっぷもあるので、札幌まで一駅電車に乗ってもよかったが、歩いてみることにする。途中のセイコーマートで朝ごはんを買ったりしてゆっくり歩いていたので、1時間ほどかかった。

北口の駐輪場横のトイレで歯磨きでもと思ったが、どうやら夜間は施錠されるようになったようだ(以前からそうだったのか?)。しかたなく、構内にあるトイレへ。あんまりきれいに整備されていないので、好きじゃないんだけど…。

そして、札幌23:08発 特急「まりも」に乗車。再び道東を目指す。やはり8月末で廃止されるせいか、今年は例年になく、席がうまり、ほぼ満席状態。明日は線路を走るバス「DMV」の体験乗車の日。そして、初めてのサロマ湖。ちょっとワクワクしながら、眠りについた。

札幌駅

札幌駅


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