[リバイバル旅行記]大阪から1万円で行くヨロン島旅行記

★★★2日目追加公開(2009/12/24公開)★★★
本旅行記は、過去に管理人が開設していたサイトのコンテンツを復活させたリバイバルシリーズです。
情報が古いため、現状と異なる箇所もありますので、ご注意ください

格安というキーワードが叫ばれる時代、そんな中に本当の格安があった。沖縄本島の北25キロにある与論島。その与論島へ大阪から往復の交通費とリゾートホテル1泊付きでたったの11800円。そんなスーパー節約旅行記。

  
1日目 (2000年02月02日)
[プロローグ] たった11800円でいけるヨロン島!?

1月上旬、ようやく卒業論文を提出。卒論の最終仕上げや風邪をひいたために、冬休み中は何処へも行けなかった。

ちょうど同じ頃、各旅行会社が発表する卒業旅行プランのパンフレットを5社から取り寄せた。最近、街の中では「格安」とか「安い」といった言葉が本当に安売りのこどく使われているが、この卒業旅行パンフの中には本当に「格安」なプランが存在する。

それが往復共に船で行く「沖縄旅行」と「与論旅行」だ。船の片道運賃が一番安い2等で約15000円であるにも関わらず、これらのプランは往復の船賃とホテル代を含めて、8800円からある。家族4人でファミレスに言っても、6000円位はする時代。これがどれだけ格安なものかが分かるだろう。

もちろん、「安い裏には何かがある」というのが世の常だが、これがまさに「片道で約40時間に渡る船旅」と言えよう。これを地獄と感じる人もあれば、天国と考える人いる。もしくは、「この値段なら…」という判断を下す人もいるだろう。

2年前に同じく卒業旅行プランを利用して、沖縄へ行ったのだが、船酔いに悩まされ、もうコリゴリと思っていたのだが、今回は再び沖縄の北25キロに位置する与論島へ旅することになった。近畿日本ツーリストの卒業旅行プランを利用。往復共に船旅であり、与論では「プリシアリゾートヨロン」というリゾートホテルに1泊。旅行代金は、往復船賃+ホテル1泊付でたったの11800円だ。

旅のパートナーは大学の先輩である。出発は混雑していないと思われる2月上旬に設定。こうして、1週間前に近所の日旅サービスで申し込み、旅立つこととなった。

船旅の出発地「六甲船客ターミナル」へ

住吉(12:45)→六甲船客ターミナル(13:00頃) 【バス】フェリー連絡バス

大きな荷物を抱え、最寄り駅から電車に乗り、住吉駅へ向かう。

フェリー連絡バスのバス停を探すため、重い荷物を抱え、ウロウロ。南口は仮設の店舗が並び、駅ビル建設が進められている。どうやら、震災の爪跡のようだ。ようやく、国道2号線沿いの阪神バスと市バス乗り場の隣にフェリーバス乗り場を発見。そして、今回の旅のパートナーである大学の先輩と合流。

神戸港(六甲アイランドフェリー乗り場)へ向かうバスは、神戸フェリーバス株式会社がダイアモンドフェリー・愛媛阪神フェリー・阪九フェリー・大島運輸の入出港に合わせて、阪神御影・JR住吉・アイランド北口と各乗り場を15往復結んでいる。アイランド北口での乗下車は無料であるが、その他の乗り場からは220円が必要となる。できることなら、顧客サービスの一環からも各フェリー会社の協力により、乗船券を提示した場合に限って、無料連絡バスとして運行して欲しいところである。

12:45発の沖縄行きフェリー連絡バスは、JR住吉駅前バス停を出発。ところが…。乗客は2名だけ。おまけに、2分進めている腕時計は12:43を指している。もし、ギリギリにバス停へ向かっていれば、悲惨なことになったかもしれない。アイランド北口で2名を乗せ、六甲アイランド港の中でも一番奥に位置する六甲船客ターミナルに13時少し前に到着。

存続が危ぶまれる「関西〜沖縄航路」

沖縄航路について、少し整理をしておく。

現在、阪神から奄美・沖縄方面へ向かうフェリーは、貨物船を除くと、大島運輸「ニューあかつき」と有村産業「飛龍シリーズ」の2社のみとなっている。2年前の春までは、これらに加えて、琉球海運「かりゆしおきなわ」と関西汽船「フェリーくろしお」が運行されていたが、廃止された。

「奄美・沖縄航路は乗船時間が非常に長いこと」や「運賃が2等で15750円もするため」、2時間弱で結ぶ航空機と比べて不利であるどころか、航空規制緩和による航空運賃の値下げにより、特割などの運賃がフェリー運賃とほぼ同じになってしまう。

したがって、混雑するのは各旅行会社がフェリーを利用した格安卒業旅行プラン(パック料金が片道2等運賃より安くなることも多い)を発売する時や座席が取りにくい時期にしか混雑しないのが実態である。

それでは、空気を運ぶだけで採算を取れないと考えてしまうが、阪神・沖縄航路のお得意様は貨物だ。つまり、沖縄への物資輸送が中心、荷物のついでにお客さんを乗せているというのが正しい言い方かもしれない。その証拠に、客は閑散としていても、荷物は満載している。実際に、琉球海運では貨客船(貨物と客を運ぶ船)は廃止させても、貨物船は大阪航路に存続させているし、大島運輸も「ニューあかつき」以外に貨物船「たかちほ」を運航させている。

とはいえ、沖縄の船会社が苦境を強いられているのも事実である。琉球海運・有村産業は会社更生法が適用されている。これらの会社は沖縄の生活に関わり、安易になくすことができないため、事業は存続せざる得ない。しかし、瀬戸内海や北海道航路でも航路廃止が相次いでおり、船の旅が危惧されるところである。

大島運輸「ニューあかつき」の紹介

これから乗船する「ニューあかつき」について紹介しておこう。

運航するのは、大島運輸株式会社であり、東京・大阪・九州と奄美・沖縄を結ぶフェリー会社というか、貨物輸送の会社である。本社は奄美大島の名瀬にあるようだが、実際には鹿児島本部を中心に動いているようだ。

14:00に神戸六甲アイランド港を出港した「ニューあかつき」は大阪湾を横断し、大阪南港西埠頭AB岸壁で荷物と客を積み、その後、関西空港を望み、紀淡海峡を通過、太平洋へ出て、右手に室戸岬・足摺岬を望み、翌朝に宮崎港到着。そこからいよいよ奄美諸島を南下し、奄美大島(名瀬)・徳之島・沖永良部島・与論島・沖縄本島へと進めていく。ちなみに、与論島へは神戸出港の翌々日の早朝5:00、沖縄本島(那覇新港)に9:00到着となる。

沖縄行きが与論島に寄港するのは春の卒業旅行シーズンと夏休みだけであり、今回の航海は今春の与論初寄港便である。反対に阪神行きは毎航海共に与論島へ寄港している。おそらく、物資輸送の関係だと思われる。

「ニューあかつき」は1991年に就航。総トン数6412トン、全長145メートル、幅22メートル、ディーゼル9000馬力×2、最大速力24.18ノット(およそ時速44キロメートル)。日本海を航行する2万トン級フェリーと比較すると、かなり小さい。また、瀬戸内海を航行するフェリーも1万トンを越えるものが多く、大海原の太平洋は元より奄美諸島を南下する国内でも2番目の長時間定期フェリーとしてはいささか心細い数字である。しかし、横揺れ防止のフィンスタビライザーやオートパイロットなどの最新機器も備えている。

そして、船体の側壁には大島運輸の船である証の「A”LINE」マークが入り、煙突には赤丸で囲まれたAのマークが入っている。以前から疑問を感じていたのだが、なぜ「大島運輸」なのに、Aなのだろうか?

いよいよ、乗船!

六甲船客ターミナル(14:00)→与論港(翌々日5:00) 【フェリー】大島運輸「ニューあかつき」

閑散とした1階の受付カウンターで乗船名簿を書き、近畿日本ツーリストのクーポンと一緒に出す。関西汽船や新日本海フェリーのようなオンライン端末は無い。行き先別に分けられた切符の中から与論行の乗船券が渡される。それと一緒に船内の喫茶店「アムニス」の無料コーヒー券をもらう。乗船開始は13:30。時間潰しのため隣に並んでいる阪九フェリーなどのターミナルを覗きにいく。

いよいよ乗船開始となる。ターミナルの2階から乗船だ。六甲アイランド港は、ターミナル2階から乗船となるが、他の港では勝手が違う。大阪南港のAB岸壁や奄美諸島・那覇新港には他の航路で見られる乗船タラップなどの設備が無く、乗下船は船の両側面に小型クレーンで吊り下げられている階段で行う。つまり、港へ着く度にクレーンが階段を港へ下ろすわけである。したがって、地上から乗船口までは長い階段を昇らなくてはいけないので、お年寄りや重い荷物を持つ者には危なっかしい。

船内に入ってすぐに目につく案内所やエントランスは予想以上にきれいだった。この感覚は個人差があるだろう。事前に調べたネット上の他の人の旅行記では、あまりよくないという記述があったので、危惧していたのだ。まぁ、今までのフェリーの乗船経験によっても個人差を感じるかもしれない。

開放感のある2等和室

座席は2等和室。沖縄航路で言う2等和室は一般的な2等、2等洋室は2等寝台に当たる。ちなみに、この体系をとっているのは、沖縄航路(九州発着の一部除く)、近海郵船くらいだ。

2等和室と2等洋室は同じ料金であるが、旅行会社のパック旅行のため、あらかじめ2等和室に決まっている。いわゆるざこ寝だ。以前の経験から2等洋室は閉鎖的になりがちなので、それほど混雑しない時期であれば、逆に開放的な2等和室の方が酔いにくい。もちろん、個人差はあるが…。

閑散期であるため、2等和室はすべての部屋が開放されず、C−3・C−5・C−6の3室、定員ベースで245名分(全613名)が開放、他の部屋は施錠、そして、プロムナードデッキ(一番上のデッキ)は全面的に閉鎖されている。

それぞれの部屋と区画は行先別に振り分けられ、与論はC−3が割り当てられる。C−3には与論で下船するR大学の団体10数名が大阪から乗ってくるようだ。とはいえ、C−3の部屋は団体や大阪乗船を含めても、20名を満たさず、ゆったりとしていた。衛星放送も映るテレビ、毛布・枕・マットがあり、旅行パックのオプションで2等洋室変更(プラス2000円)をしなくても十分だ。

船内探検へ♪

そろそろ船内を散策に行こうかと思ったところで、フェリーが岸壁を離れているのに気づく。時計の針は出航時刻14時にはなっていなかった…。

おまけに、フロントで売店の営業時間を聞いてみるが、20時か21時までというはっきりしない返事。住吉駅のバスから始まって、出港時刻、沖縄の朗らかなムードが流れているのか、悪く言えば、いい加減、よく言えば、ランダムというかファジーというか温和というかのんびりというのか…。

トイレは船内に3ヵ所あるが、開放されているのは1ヵ所だけ。その隣には浴室があるが、浴槽にはお湯を貯めないようにという注意書きがあり、洗い場のシャワー利用のみということだ。シャワーは4本(男性浴室)しかないが、乗客が少ないので充分。沖縄行は与論入港まで、阪神行は大阪入港まで24時間利用できる。トイレも比較的きれいである。

パブリックラウンジにはソファーとテレビがあり、比較的充実。しかし、自動販売機コーナーのジュースが140円ってのは少し戴けない。その横には給湯機があり、カップラーメンを持参すれば、大変便利である。売店の品揃えも充分とまでいえないでも、日用品的なものもそこそこ揃っている。

そして、割り箸も1本10円で販売されている。枕カバー1枚10円というのもあるが、これは枕に結べるように形どられた単なる紙。10円の価値はいかに…。古本や土産物もあり、ブルーシールアイスクリーム(定価100円・実売130円)もある。ただし、カップラーメンは無かったようだ。つまり、レストランへ行ってくれってことか…。

大阪南港AB岸壁へ寄港

神戸を出港して、50分ほどで、ATCやWTCが見えてくる。南港は入口からかもめ埠頭、西埠頭、フェリー埠頭と続き、「ニューあかつき」は真ん中の西埠頭AB岸壁へ15時前に着岸。かもめ埠頭にはブルーハイウェイライン「SFさつま」(まもなくBHL西日本に子会社化される)、マリンエキスプレス「みやざきエクスプレス」が停泊、フェリーターミナルに隣接するフェリー埠頭には高知特急フェリー「ニューとさ」も停泊している。

ここで大阪からの乗客が乗船してくるとは思いきや、乗ってくるのは岸壁に詰まれたコンテナや車ばかり…。フェリーターミナルからAB岸壁への連絡バスは16時発なので、実際に乗客がやってくるのは16時過ぎである。おまけに、乗船手続きを終えても、出港約30分前にならないと乗船できないため、ずっと小さな待合室で待ちぼうけを食らうわけだ。神戸からだと、好きな場所を確保でき、つくづく神戸から乗船して良かった。予想以上に大阪で乗客を積み、関西を離れる。とは言えど、数十人程度である。与論行の部屋はR大学の13名+3名だった。

大阪湾を南下し、太平洋へ

日が暮れかける17時過ぎ、定刻より少し早く出港する。船は大阪湾を南下していく。夕食は持参したカップラーメンやおにぎりで済ませる。甲板へは自由に出ることができ、関空を探してみるが、結局、分からずじまいで紀淡海峡を出ていた。

そして、いよいよ太平洋へ。天候が悪くなくとも、6000トン級の船とあれば、多少は揺れるものであるが、今回の公開は本当に揺れない。右手に室戸岬の灯台が見える頃、床に着いた。同室のR大学の学生がうるさくて、少々寝づらかった。サークルやグループで行動する時につい浮かれて騒ぎがちになることに気が着かないことが多い。反面教師というべきか、自分も気をつけようと思った。それにしても、R大学の学生なら、もう少しわきまえてくれよ…。


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